臆病者

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悠奈は、まず手紙を手に取り宛名を見た。 紙は和紙で字は墨で書いてある。 「父さんの字だ……」 流れるような達筆な字体。 あまりに達筆なので分かりにくいが 【悠奈へ】 と、書いてあるのがかろうじてわかった。 緊張で心臓が跳ねた。 「父さんが……僕に宛てた手紙……」 ドキドキと鼓動が速くなる。 「……中身……確かめなきゃ……」 興奮で震えてしまう手で封を切り、中身を取り出した。 そしてーー 中身を見る。 とたんに、悠奈の顔はひきつった。 身体も硬直してしまう。 「…………よ………読めない………」 手紙に書いてあったのは、 まるでミミズがのたくったようなにょろにょろした文字だった。 なんとなくわかるのは部分的な漢字と平仮名のみ。 ざっと目を通してみたものの、内容は理解不能だった。 「………これってもう……新手の嫌がらせ、なのかな……」 今時、この字体を読める人は少ないと悠奈は思っている。 それをわかっていて書いたのなら、もはや嫌がらせでしかない。 ,
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