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「いや~、土方はん、音を聞いただけで俺と判りはるなんてさすがやなぁ」
山崎は感心したように、土方に言った。
しかし、土方は眉をひそめ、
「わざと音を立てて、存在を知らせる忍など、此処ではお前くらいしかいないだろ」
と、呆れたように言う。
それを聞いた山崎は、ボリボリと後ろの頭を掻きながら、
「そりゃそうやったなぁ」
と、ヘラヘラ笑いながら戯(オド)けたように言った。
土方はこの緊張感がまるでない山崎の様子に溜め息をついた。
同時に‘もっと緊張感を持て’と言いたくなった土方だったが、
そんなことを注意したどころで無駄だと判っているので、今さら何かを言う気はさらさらなかった。
土方は憂鬱な気分を変えるために煙管を吹かす。
そのせいで煙が室内に充満した。
「山崎、これを見てくれるか?」
土方は口から煙を吐き出しながら、漆黒の刀を山崎に手渡した。
刀を受け取った山崎はじっくりとそれを眺める。
「えろう見事な刀やけど、漆黒やなんて珍しいなぁ」
と、漆黒の刀を物珍しげに、眺めている山崎は率直に見た感想を言った。
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