散策

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「そこでだ、山崎。 念のためだが、お前に神谷崎の素性を調べてもらいたいんだ」 土方がそう言うと、山崎はヘラヘラとした雰囲気は嘘のように消え去り、真剣な目で土方を見ると、 「御意」 と、肯定の意を示した。 「しかし、土方はん。 見張りはせんでよろしいんで?」 「あくまで念のためにやることだから、見張りはまだいい。 それに、総司が神谷崎のことが気に入ったみたいだからな。 お前が見張っていなくても、総司が付いているだろう」 山崎がそう聞くと、土方は何故か嬉しそうにそう言った。 その様子を見て山崎は、 <土方はん、沖田はんが神谷崎のことを気に入ったから自分が苛められへんですむのが嬉しいんやなぁ> と、考える。 土方は自分から言うことはないので、沖田が土方にしていることを知っている者はほとんどいないが、山崎は、屋根裏からいろいろと見ているのでそのことを知っていた。 しかし、日頃からそんなことを見ていることを山崎は自分の口から言ったことはない。 言うと山崎自身にとばっちりがくる可能性があるからだ。 だから重大なこと以外は基本的に胸の内にしまっておくことにしている。 <そういえば、昨夜も沖田はん、土方はんの部屋でなんや物色してはったなぁ> ふと、そのことを思い出した山崎だったが、重大なことでもないだろう、と判断して、黙っておくことにした。 ,
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