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「ほな土方はん。
俺はもう行きますわ」
山崎はニッコリと笑顔を再び作りそういうと、持っていた刀を土方に返した。
刀を受け取った土方は、
「刀を借りていかなくて大丈夫か?」
と、聞いたが山崎は、
「もう記憶したで大丈夫や」
と、どこか自慢するように言った。
土方はフッと笑って、刀を畳の上に置く。
それを確認した山崎は、軽くお辞儀をすると、その後、黒い残像を残し一瞬で屋根裏に戻っていった。
山崎がいなくなり、部屋に一人になった土方は、畳の上に置かれた漆黒の刀を見てふぅ、とため息をついた。
<とりあえず神谷崎のことは、山崎の報告があるまで待てばいいか……>
土方はそう考え、それから漆黒の刀を手に持つと刀を抜こうとした。
しかしー…
「……ぐっ……ぬ……」
どんなに力を入れても刀は抜ける気配すらまるでなかった。
やがて、土方は刀を抜くことを諦め、眉をひそめてその抜けない刀を眺める。
「やっぱり、だめか。
こんなに見事な刀なのに抜ける気配すらないとは、おかしな刀だぜ」
土方が呟いた独り言は部屋に寂しく響いた。
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