散策

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ーーーーーーーーーーーーーーー 土方が沖田の脅迫文を発見した頃、悠奈、沖田、永倉、斎藤の四人は京の町に来ていた。 永倉と斎藤は屯所を出る前に着替えたので、現在は稽古で着るような着物ではなく最初、悠奈が会った時に着ていた着物を身につけていた。 沖田、永倉の二人は話をしながら町を歩いていたが、悠奈と斎藤は会話に参加していなかった。 斎藤は会話にあまり参加しないのは日常的ならしいのだが、悠奈が会話に参加しなかったのは町に見とれていたからだ。 現代の京都ならそんなことはないのだが、幕末の京となれば話が違う。 ここは、悠奈にとって何もかも珍しい。 ここにはコンクリートの建物、高い建物もなく全部木造で、道路もアスファルトではなく土の道。 電線がない広い空。 排気ガスで霞んでいる平成の空より澄んでいるような気がする。 そして、車も電車もない。 人々が着ている服も洋服の人はいない。 ほとんどの人が着物で男も女も髷を結っていた。 この光景はどう見ても、平成の世界ではあり得ない光景ーー……。 (……僕は本当に幕末に来たんだ……) まだ、心のどこかで幕末に来たことを否定していた悠奈は、自分が幕末にタイムスリップしたことを改めて感じさせられた。 ,
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