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悠奈が景色に見とれて立ち止まりかけたとき、グイッと彼の腕を掴んで誰かが引っ張った。
悠奈は、
「うわっ」
と、小さな声をあげて少しよろめきながらも何とか体勢を立て直して引っ張った相手を歩きながら見上げる。
悠奈を引っ張ったのは、斎藤だった。
彼は無表情で、悠奈を見下ろす。
斎藤と目があった悠奈はゴクリと生唾を飲んだ。
(何なんだろう……)
とか考えていた悠奈だったが、斎藤はすぐに感心をなくしたのか前を見た。
悠奈の腕を掴んだまま斎藤は歩いている。
(何で、腕を掴んだままなんだろう……)
と、悠奈は思ったがそんなこと面と向かって言う勇気など悠奈にはなく、ただ斎藤を見上げるのみ。
悠奈の視線を感じたのか、斎藤は再びチラリと悠奈を見て、
「はぐれると危ない」
とだけ言った。
(はぐれると危ないって、はぐれると迷子になるから危ないって言っているのかな……?
だったら、お礼を言わなきゃ……)
「斎藤さん……あの……その…あ…ありがとう……ございます……」
悠奈は勇気を振り絞ってそう言った。
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