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「礼を言われるほどではない」
と、斎藤は悠奈から視線を逸らしながらぶっきらぼうに言った。
(不機嫌にさせてしまったかなぁ……)
と、悠奈は思ったが、斎藤の顔を見たとき、耳の所が微かに赤いことに気づく。
それを見た悠奈は、
(もしかして斎藤さん……恥ずかしがってる……?)
と、考える。
悠奈は斎藤のことを無表情で無口の暗い人と思っていたが、それは違うのかもしれないと早くも認識しはじめた。
(斎藤さんは、僕が迷子にならないようにしてくれたし、無口だけどまったく話さないわけじゃない。
多分、僕と同じで人見知りが激しいだけなんだ……)
と、悠奈はまだ微かに耳の部分が赤い斎藤を見ながらそう考えた。
「着きました。この店です!」
悠奈が考え事をしていた時、前方を歩いていた沖田が、立ち止まってある店を指した。
悠奈と斎藤、永倉も立ち止まり、店を見る。
店の入り口には暖簾(ノレン)が掛かっている。
暖簾には文字が書かれていたが、その文字は崩れて書かれていたので悠奈には何て書いてあるかわからなかった。
入り口は戸が開いてあり、客が出入りしやすいようになっている。
中のガヤガヤとした賑わいが外に立っている四人の耳にも聞こえたので、それなりに繁盛している店なのだろう。
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