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悠奈、沖田、斎藤、永倉の四人が店に入ると、店員らしき二十代くらいの女性が、
「おいでやす。
空いとる席におかけやしとくれやす」
と、早口で言った。
客が大勢いて、女性は忙しいそうだった。
しかし、ここにいる店員はこの女性の他に四十代くらいの女性しかいない。
二人で大勢の客の相手をしているらしい。
(大変だなぁ……)
と、悠奈は他人事のように思った。
「悠奈君、いつまで店の入り口に立っているのですか?
こっちですよ~」
どうやら悠奈を残して沖田たち三人は先に席に座っていたらしく、沖田は悠奈に向かって元気よく手を振っている。
悠奈は、慌てて沖田たちのいるところまで移動した。
そして、斎藤の隣に座る。
斎藤は、悠奈のことをチラリとも見ずに、壁に掛けてある献立表をじっと眺めていた。
「悠奈君は何を食べます?」
沖田はもう食べるものが決まっているのか、悠奈の方を見ながら笑顔で聞いてきた。
「……えっ……僕は……えっと……」
悠奈は沖田にそう言われて慌てて献立表を見たが、絶句した。
それは献立表に書いてある文字ですら、悠奈が読めない古い文字で書いてあったからだ。
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