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あんなに騒ついていた店内は現在静かになっている。
おまけに有ろう事か客の全員、店員の女性まで、悠奈を見ていた。
痛いほどの視線を浴びてしまった悠奈は、頬を引きつらせ、助けを求めるように沖田を見た。
しかし、沖田はお茶を啜っていて悠奈を見つめようとしない。
悠奈は諦めて、永倉を見たが永倉は俯いて何やらブツブツ呟きながら、グネグネしていた。
よく耳をすまして聞いてみると、
「……男……あいつは……男」
と、微妙に聞こえた。
何だか怖かったので、今の永倉は関わらないでおこうと、悠奈は決めて、次は斎藤を見た。
斎藤とは目が合ったものの、スグに目を逸らされてしまった。
どうしょうもなくなった悠奈は、視線が痛かったので、俯いて、お茶をズズッと啜った。
普通の状態なら美味しかったと思うのだが、悠奈には味なんてわからなかった。
(何でちょっと笑っただけなのに、こんな風になったんだろう……。
この時代は笑い声を出して笑ってはいけないのかなぁ……)
悠奈はそう思ったが、永倉たちも客もこうなってしまったのは、悠奈の笑い声で悠奈の存在に気づき、そしてその美しさに見とれていたのだ。
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