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「ど、どうしたんだね?急に」
近藤は突然首を振った悠奈にちょっと驚いて声をかける。
「……あっ……いえ…ちょっと考え事を…ご、ごめんなさい……」
近藤の声で現実に戻った悠奈はちょっと頬をひきつらせて謝る。
(…考えに夢中だった……
うう……次は気をつけないと……
ただでさえ怪しいと思われているのに……)
悠奈は視界の端に入る土方の痛いほどの視線に気づかぬフリをした。
「では次は、君の持っていた刀について聞きたいんだが……」
近藤はまた悠奈に尋ねた。
(……刀?何それ…)
悠奈は質問の意味がわからず首を傾げたが、近藤が
「柄も鍔も鞘も漆黒の刀のことだ」
と、付け足して説明をしてくれた。
漆黒の刀というので悠奈は、父の部屋で見つけたあの刀のことを思い出す。
(あれ、持ってきていたんだ……)
意識していなかったけど、あの時はしっかりと刀を握り締めていたなあ、と朧気ながらに思い出す。
悠奈の顔色と仕草の僅かな変化で刀のことを思い出したなと理解した近藤は隣の土方にそっと目配せをした。
土方は近藤の視線に気付き彼の視線だけで何を伝えたいのか理解をした。
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