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「だけど、他の家族はいるだろ?」
その声に悠奈はそちらの方を向いた。
ぼさぼさの髪を無造作に後ろに束ね、浅黒い肌で荒らさがあるがわりと整った顔立ち。
紺色の着流しを崩して着ている。
悠奈はこの声と、体格に覚えがあった。
(この人、確か原田さん?)
昨日の行灯の薄暗い光では顔がいまいちよくわからなかったが声と体格は覚えていたので、原田だとわかった。
「………す、すみません……母も……亡くなっていますし、兄弟もいないので……家族はいません……」
「「「「…………………」」」」
空気がさらに気まずくなった。
「!?……うわっ。やっべしくった!!」
思わず叫んだ原田の頭に
ゴツ!
「痛えっ!!」
拳骨が落ちた。
「ちゃんと考えてから話せ!」
原田を殴ったのは、見た目が十五、六くらいにしか見えない童顔の青年。
小柄な体型で着流しではなく袴を着ていた。
「痛えよ、ぱっつあん……」
少し涙目になった原田。
「うるさいっ、左之。
お前のせいで、ただでさえ気まずかった空気が余計に気まずくなっちまったじゃねーか」
青年は何故か立ち上がって腕組みをしている。
理由は立ち上がらないと原田の頭を叩けなかったからだ。
・・・・・
青年は座っている原田より頭ひとつ分くらい高いくらいの身長しかなかった。
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