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「いいじゃないか歳。
話をしてみる限りでは、この子はとても間者には見えないし」
近藤が土方を説得するように言う。
「だが、こいつの素性はまだほとんどわからんねーんだ。
そんなえたいも知れないような奴を浪士組に入れることは俺は反対だ」
ズキン…
悠奈は土方の言葉に胸が痛んだ。
(言われて当然のことだけど……でも……辛いなぁ……)
悠奈は胸をぎゅっと押さえる。
「でも、この子身寄りがないんだよ。
まるで捨てられた子犬のような目をして、可哀想じゃないか!」
近藤はううっと突然唸って目頭を押さえた。
「……近藤さん、神谷崎を仮に隊士に入隊させたとして、こんな臆病者に人が斬れると思うか?
ここはは京を護るための組織だ。
皆命をかけてここにいる。
自分の意思さえもほとんど言えないような弱い臆病者はいらねえんだ」
(人を……斬る……
……命をかける……)
悠奈は幕末という時代がどういうものか知識ではわかっていた。
それなりに覚悟もしていた。
でも、人を斬ると聞いたとき、身が凍る思いがした。
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