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「落ち着いたかい?」
「……はい。あの……ありがとう……ございました」
悠奈は少し耳を赤くして礼を言った。
今思うとちょっとどころかかなり恥ずかしい。
自分は小さい子供のように泣いていたのだから。
「……礼を言われるまでのことはしてないよ」
近藤は少し苦笑いをしながら言った。
「それより、さっきのことを君に決めて欲しいのだけどいいかね?」
「……は、はい……」
悠奈の返事に近藤は満足そうに頷いた。
「もし、君が良ければ、私の小姓として働いて欲しいと思っているんだ。
嫌なら無理強いはしないが……」
(……この時代に知り合いも帰る家すらない。
どうせ行くあてがないんだからここにいて、鈴の音を聞く方法を探せば……)
悠奈は目を閉じて考えていたが、ゆっくりと目を開く。
眼前には期待に満ちた顔の近藤がいた。
(それに僕は……近藤さんのそばにいたい。
何もできないかもしれないけど……この人のために少しでも役に…立ちたい…)
悠奈の心に自然とそういう気持ちが沸き上がっていた。
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