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「心が、痛かった」
君はくっくって笑って
それはまるで本物に見えたんだ。
「俺らの胸の真ん中にあるのは
機械の塊だけだ」
「わかってるよ…。
でも、やっぱり…。」
言い淀む俺の頬に、
長くてつるつるした指が触れる。
そしたらなんかもう、
出ないはずの涙も瞳から
溢れてしまいそうだった。
嘘じゃない。
俺、苦しいんだ。悲しいんだ。
大切なモノを失ってしまうのが
本当に嫌なんだ。怖いんだ。
君は違うって言うだろうけどね、
俺、愛しいんだ。
この部屋で出会って47日目。
ここで時間がすごく幸せだった。
俺ら相反する存在でも
酷似した存在でもないんだよ。
俺は俺。君は君だ。
それは理屈じゃないんだよ。
「咲人。」
君が俺を呼ぶ。
「壊してくれて嬉しかった」
君が呟いて、笑う。
あぁ、俺やっぱり好きだよ…
「ここでお前に勝ったら
別の誰かに殺されるまで、
戦い続けなきゃいけなかった。
せめてお前の手で
壊してほしかったんだ」
俺が目を見開くと君は
ゆっくり諭すように言った。
「俺も、すきだった」
君が儚げに手を差し伸べるから
思わず掴んで抱き寄せた。
「お前、綺麗だな」
消えかけの声で言う君は
俺なんかと比べられないくらい
美しくて。
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