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「さき…」
キュルキュル回る喉で
君は俺を呼んだ。
「ここにいるよ、見える?」
ぼんやりと上げた君の顔が
歪んで悲痛な笑みを浮かべる。
「アイカメラなんか
もうとっくに壊れてるよ」
「じゃあもう見えないの?」
「ああ…」
悲しくて悲しくて、
俺は君の眼球に触れた。
滑らかな曲線を描く表面が
黒々とこちらを見つめていた。
君の腹部からオイルが噴き出す。
刃物が突き刺さったその傷口は
どうやらかなり深いみたいだ。
「ねぇ瑠樺さん」
「ん?」
「痛かった?」
「痛みなんて俺ら感じねぇよ」
「俺は…」
両手に君を貫いた感触が
しかと残っている。
「俺は痛かったよ」
君は不思議そうに見えない
アイカメラで俺を探した。
「どこか壊れたのか?」
「ううん」
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