煙草と海とキャンバスと

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 そんな感じで何気ない日常を過ごしているうち、私は一年を平凡に過ごしてしまった。  なんとなく過ぎてしまったというべきか。  私が高校二年に上がる頃、美術部の前の部長が引退し、代わりに私が部長を任された。  自分でも思うけれど、私は部長だとかリーダーだとかに向いている性格はしていない。  それでもコンクールで賞を取り続けていただけに、なんとなく選ばれてしまったのだ。  自由・自治・自律をモットーにしている学園だけに、部長という仕事は案外大変だ。  色々と生徒会に顔を出したりしなくてはならないから、それなりに忙しく過ごしていた。  それでも (何か物足りない) とはいつも思っていて、それはコンクールで何度も連続で賞を受賞しても満たされることがなかった。  高校二年になったというのに、私の担任は変わらず美術の顧問だった。  そして顧問は相変わらず 「次のコンクールも頑張ってね」 と言う。  別に私はそれをプレッシャーには感じなかったが、逆に (別に頑張ったことなんかないんだけどな) とは思った。  賞のために描こうと思ったこともなかったし、賞を逃したとしてもきっと何も感じないだろう。  人はそれを無欲だと言う。  友人からも 「もっと自慢したっていいのに」 などと言われるけれど、私からしたら 「ものすごく努力して賞を獲った人なら、自慢するのかも」 と言う程度だ。  私はいつもと変わらずに絵を描いているだけだから、喜びが少ないのだろう。  そんなある日、学校に行ったら、担任であり、美術部の顧問でもある先生がアキレス腱を切って、しばらくお休みになると言われた。  先生には申し訳ないけれど (これでコンクールのことは言われずに済むな) とも思う。  うちのクラスは三日ほど担任不在のまま過ごし、いい加減に担任もいないままでは不安だと思っていたら、友人が 「なんか臨時の先生来るんだって」 と言う。 「へぇ。どんな人?」 「分からないけど、美術部の顧問もその先生が臨時でやってくれるみたいだよ」 「ふぅん」  なんだか憂鬱だ。  どんな先生が来ても構わないけれど、またコンクールがうんぬんと言われるのは面倒くさい。  なるべく関りたくないと思っていたけれど、その新しい先生の就任初日からいきなり面倒なことになりそうだった。
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