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昼休みのことだ。放送が流れて、美術部の部長はすぐに職員室に来いと言う。
「えぇ、面倒くさいなぁ」
私は伸びかけの髪をかき上げながら席を立ち、溜息を吐いた。
「多分新しい先生のことだよ。どんな先生か見てきて」
友人にそう言われて、私はひらひらと手を振って教室を出た。
これで口うるさいおばさん先生だったら困る。美術部の顧問を引き受けるくらいだから、きっとある程度の知識はあるだろうし、もしかしたら他の先生からもコンクールで私が受賞していることを聞かされているかも知れない。
「すごいわね」
なんて言われたら、やってられない。
そんなことを考えながら、職員室のドアをノックした。
「失礼しまーす」
ドアを開けると、学年主任のオジサン先生が
「お、来たな。こちら、新しく君のクラスの担任と美術部の顧問として臨時でやって来た先生だ」
と隣にいた男の人を指した。
「どーも。ネモトクロードです」
ネモト・クロード。外人みたいな名前だと思ったけれど、根元蔵人という漢字を書くらしい。
「美術室に案内してやりなさい」
「はぁい」
私はその新しい先生を連れて、美術室に向かった。もっと先生らしいかっちりした人が来ると思ったら、ポケットに両手を突っ込んだまま歩くし、髪もちょっと長めだし、なんとなく先生らしくない。
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