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「さっきのオッサンに教室美化ってうるさく言われたんだけど」
と彼が言う。オッサンというのは、多分、学年主任のことだ。
「あぁ、あの先生は美化委員の顧問だから」
私が言うと、先生は面倒くさそうに頭を掻いた。
「口うるさそうだなぁ」
「まぁ、うちの学園では一番厳しい人かも」
「君たちも大変だね」
まさか先生の口からそんな言葉が出てくるとは思わず、私はつい笑ってしまった。私の名前を聞いても何も言わなかったから、あんまりコンクールなんかにも興味がないのかもしれない。私はちょっと安心した。
美術室につくと、彼はまず最初に
「なぁ、掃除は誰がやるんだ」
と言った。
「今までは、顧問の先生がやってましたけど」
「…つまり俺にやれって言ってる?」
彼が首をかしげた。
「まぁ、そういうことになりますね」
私が肩をすくめると、彼は眉をさげた。
「どうにかならない?俺、掃除とか苦手なんだよ」
「どうにかって言ったって」
本当に先生なのかと疑いたくなる。でも、なんだか放っておけない人だとも思った。なんでそんなことを思ったのか、よく分からないけれど
「分かりました。私がやります」
と言ってしまった。
「お、やってくれる?」
「仕方ないじゃないですか。一応、美術部の部長ですから」
「じゃぁ、頼んだよ、部長」
ぽん、と肩を叩かれた。
(あぁ、なんでこんなことに)
いくら部長だからと言って掃除まで引き受ける必要はないはずなのだけれど、つい口にしてしまったものは仕方ない。こうして私は、それから毎日美術室の掃除をするはめになってしまった。
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