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(あの『突然現れた』竿、そう言う事か!…)
「クソッ!」
男は歯を食いしばって壁を殴りつける。
音で解ったのか、シーバーからは男を窘める声が発せられた。
『悔しがってる隙があったら、早く戻って捜索隊の編成をするんだな』
「…了解」
男は乱暴にシーバーの電源を切ると、倒れている他の隊員達と共に来た道を戻っていった。
「ふぅ……」
ヘッドセットを外した白衣姿にサングラスの男は椅子に凭れて両手を組む。
その口元は微かに笑っており、時折含み笑いの様な物が漏れている。
だがその裏腹に、男は真剣に考えを巡らせていた。
(逃げ出した所で一体どうする気だ?。あんな小娘一人が『真実』を言った所で、異常者扱いされるのが落ちだと思うが…)
男は立ち上がると、巨大な窓に自らを映す。
既にその表情は、真顔へと変化していた。
(‥いや、既に気付き始めた連中も少なくは無い。そう言う奴らと接触された場合は……)
「‥笑っている場合でも無いか…」
男はサングラスを少しずらすと、眼下に広がる海、向こうに広がる街の明かりを皮肉な笑みを浮かべて眺めのだった。
『Y.U.M.E. の 力』
著者、キャラクターイラスト
335 遼一
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