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青年は煙草を床に捨てて火を踏み消すと、更に奥へと進む。
それに連れて騒がしさも増し、料理や酒、煙草に硝煙の臭いが入り混じった良く解らない香りが彼の鼻を刺激した。
通路の行き着いた先にあったのは、とても賑やかな酒場だった。
客は老若男女様々で、下は小学生位の子供から上は90過ぎの年寄りまで幅広い。
青年は行き交う人々の合間を縫い、真っ直ぐカウンター席の一番右端に座る。
そこが彼の何時もの席だ。
「今日は遅かったですねプラグさん?」
カウンターの向こう側で漫画雑誌を読む少年の言葉に、青年プラグは煙草をまさぐりながら「ちょっとな」と答える。
「取り敢えず何時ものセット頼む」
「嫌です」
プラグの注文を少年は顔すら向けずにあっさり拒否する。
「ツケを払わない人にタダメシ提供するほど、俺はお人好しじゃありません」
「頼むよタッちゃん」
「『タッちゃん』じゃなくて、タイプです!。変なあだ名で呼ばないで下さい!」
「そんな事言わずにさぁ~。腹減ってたら『仕事』もこなせないし、」
『ドンッ!』
タイプは鬱陶しそうな表情を浮かべ、水の入ったコップを勢い良く置く。
余りの強さに水が少し零れた。
「水を沢山飲んだらお腹膨れますよ~?」
「水より固形物くれ」
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