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木刀を構えたままでゆっくりと廊下に顔を出す。
春特有の生ぬるい空気に満たされている、ひっそりとした暗い廊下には見た限りでは何もない。
しっかりと廊下確かめるのと安全の為、唯一の光源である電球のスイッチを入れようと廊下に一歩足を踏み出した。
異変に気付くのと、すぐ近くのスイッチを入れるのとは殆ど同時だった。
足裏に広がるヌルッとした液体の感触。廊下を満たしていたはずの生ぬるい空気は錆び臭い。
スイッチを押したままの指は何か柔らかく脈動する塊に触れ、脳に異変を伝える。
視界に広がるのは肉の赤。
電球のぶら下がっている不自然な肉の洞。
錆びたような血を滴らせ脈動する肉は、静かに、しかし、確実に、否が応でもコレが現実だと突きつけてくる。
天井に当たる場所から垂れた血が、足元に落ち、小さな音を立てる。
すぐ後ろの部屋からは、時折通る車かバイクの音が聴こえてきた。
フラリと倒れ込むように、もう片方の足も踏み込んだ。
両の足裏には、相変わらずヌルッとした液体の感触が広がる。
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