石を蹴る女

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 その日は休日だった。 「父さん、またまた来てるわよ、例の女」 「別にいいじゃないか、絵を描くのが好きなんだろ」  遅い朝食を終えて新聞を広げていた父が、眼鏡の上から七面倒に瞥た。 「別にいいけどさ。……どんな絵を描くんだろうね」 「今度、俺が見てきてやるよ」 「父さんの見る目は当てになんないけどね」 「馬鹿にしやがって。これでも、若い時分はゴッホやモネに傾倒して、美術館巡りをしたもんだ」 「へえ、そんな頃があったんだ? 人は見掛けによらないもんだね?」 「ったく。ちっとは親を敬え」
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