小さな掌

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俺は必死に頑張った。 千津も一生懸命支えてくれた。 そして…俺はソロデビューを果たした。 今日はあの時、バンドで失敗した会場での音楽祭だ。 でも…今回は客席に千津がいる。 すごい安心感だった。 あの時、声が出なかったのはいつも見える客席の千津がいなかったからなんだ…今さら気付いた。 客席の千津が俺の視線に気付いて小さく手を振る。 その時、新人賞争いしているライバルの男が俺に話しかけてきた。 「あれ、お前の女?地味だなぁ。お前ぐらい売れたらもっと良い女と付き合えるだろ?俺の女はモデルだぜ」 俺は鼻で笑う。 「ふん、なに言ってんだ?あんな良い女、他にいねぇよ」 呆気にとられる男をおいて、俺はステージに立つ。 そして…俺はありったけの想いと感謝を込めて歌う。 客席の千津が顔を輝かせて声援を送ってるのが見える。 俺は満足のいく歌を披露できた。 ついに新人賞の発表の瞬間がきた。 結果は…俺が新人賞に選ばれた! 俺はもう一度歌う。 客席の千津は泣いて、隣の涼子に支えられてた。 賞を取れたことより、千津の涙を見て俺も思わず涙声になる。 観客もそんな俺を見て大歓声だ。 こうして俺は…ビッグになるための階段を上がり始めたのだった…。 千津…言葉じゃ足りない…言葉じゃ伝えきれない…言葉じゃ足りないけど…けど…ありがとう、千津…。
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