小さな掌

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俺の名前は友紀(ともき)。 国際的ロックバンドを目指しているミュージシャンだ。 今はまだ全然ダメだけど…。 ちなみに、 「俺はビッグになる!」 が口癖のお調子者だ。 「友紀!」 笑顔で俺の名前を呼びながら小柄な女が走ってくる。 高校からの彼女、千津(ちづ)だ。 取り立てて何も無い、普通の女。 でも俺は千津が大好きだ。 売れないミュージシャンの俺をいつも励ましてくれる。 地味だけど、すごく良いやつなんだ。 俺の歌を好きだと言ってくれるのも嬉しい。 千津がいなかったら俺は歌をやめていたかもしれない。 いつも俺は千津を客にして歌ってた。 「友紀!バンド頑張ってね!私…友紀の夢が叶うまで待ってるから!」 千津はいつもそう言って笑ってくれてた。 それなのに…俺は千津を裏切った。 「おい、友紀!俺達のバンドにもチャンスがきたぜ!」 バンド仲間のサトシが話し掛けてきた。 どうやらバンドオーディションがあるらしい。 俺達のバンドは小さいライブハウスの活動が主で、今度のオーディションはメジャーデビューの最大のチャンスだ! そして、俺達のバンドはオーディションに合格しメジャーデビューが決まった! 「やったね、友紀!おめでとう!」 千津が喜んでくれてる。 ずっと俺を支えてくれた千津。 俺は千津を喜ばせることが出来て嬉しかった。 それから月日が流れて…。 「友紀、今夜メシ行こうぜ」 ある日、サトシが声を掛けてくる。 「おう!…あっ、ダメだ。今日、彼女の誕生日なんだ」 「なんだよ…いいじゃねえか!お前、付き合いわるくね?」 「え…そうかな…」 「なぁ、友紀」 サトシが俺の耳に囁く。 「俺らもうすぐデカい会場でライブするんだぜ?一流バンドになるんだよ!もう…あの子のことはよくねぇか?」 「な、なに言ってんだよ!」 「いや、あの子がお前の周りチョロチョロしてるとさ、お前のイメージダウンかもよ。一流はもっと良い女と付き合わないとな」 「………」 俺は考えてしまった。 確かに俺らのバンドは今や売れに売れている。 千津みたいな地味な女はもう…別れたほうがいいかも。 「…わかった。メシ行こうぜ、サトシ」 俺は最悪な決断をした…。
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