小さな掌

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「何やってんだよ、ビビりがよ!もうお前とはやれねぇ!」 声が出ずに、ライブを台無しにした俺はバンド仲間に捨てられた…。 真っ昼間から公園のブランコに乗って俺は俯いていた。 俺の力はこんなもんだったのか…涙が出た。 情けなくて…自分の弱さに涙が止まらなかった。 その時、誰かが隣に座った。 千津だった…。 「ち…千津…」 「涼子ちゃんがね、ライブに行ったんだって。友紀が失敗したら笑ってやろうと思ってたみたい。…聞いたよ、声がでなかったんだって?」 「う…うるせぇ」 「でね、あんたしかいないだろうから励ましてやれって言われて…」 千津はブランコから降りて俺の後ろに回り、背中をゆっくりとさすり始めた。 「ねぇ、友紀。もう一度頑張ろうよ。バンドじゃなくても…もう一度頑張ってビッグになろうよ」 「千津…でも…」 「友紀…私、もう一回待ってても良いかな?」 千津は優しい声で言う。 くだらない見栄で千津を捨てたのに…あんなに泣かせたのに…。 俺は…何も言えずに子供みたいに泣きじゃくった。 「…そ、そ…うだな、俺…もう一回…頑張るよ…」 俺は泣きながら言った…。 もう一度、売れる前に見上げた青空に誓ったことを思い出そう。 ビッグになって、いつも支えてくれた千津に喜んでもらうという原点に帰ろう。 俺は今度こそ強い意志で決意した。
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