―ユリちゃん―

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 机の下から声がしたので、床にへばりつくようにして手を伸ばした。  不意に、指先に何かが触れた。それをつかみ、身を起こす。  それは『目』だった。少し水分が飛んだ、丸い人間の眼球。それが、手の中からギョロリとツバサを見ていた。 ―ツバサ君、多分それは私の目だわ。ツバサ君の顔がよく見えるもの― 「本当?じゃあこれも見える?」  熊のイラストが書かれた紙に、眼球の光彩の部分が向くよう、きちんと持ちなおす。 ―赤い服を着た熊の絵かしら。当たってる?― 「凄い!当たってるよ!やっぱりこれはユリちゃんの目なんだね」  感動するツバサに、ユリは言った。 ―今まで何も見ることが出来なかったのは、暗い所に私の目があったからなのね、きっと。…それよりツバサ君、早く私の口を見つけてくれないかしら― 「ああ、ごめんねユリちゃん。すっかり忘れてた」  改めて身を屈め、ユリちゃんの『口』を救出する。ツバサは眼球と口を手のひらに乗せて、まじまじと見つめた。 「ユリちゃんの他の体は何処にあるんだろうね」 ―『耳』はこの部屋の中にあるんじゃないかしら。じゃないと私にはツバサ君の声が聞こえないもの―  口が蠢いて、眼球がツバサを見つめる。  それを見ている内にツバサは、良いことを思いついた。 「じゃあ、ユリちゃんの他の体を探そうよ。耳だけじゃなくて、腕とか、足とかも。そしたら僕はユリちゃんともっと楽しく遊べる。ユリちゃんもちゃんとした体があった方が良いでしょ?」 ―…そうね。ツバサ君とだったら全部探せるかも― 「そうと決まれば、早速体探しだね。頑張ろうね、ユリちゃん」 ―うん― ――体探しスタート―― .
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