和室

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それは母が寝たきりになってから亡くなるまでの二年間に渡っての出来事です。 和室には常に墨と母のつけてた香水の香りがあり…いいえ実際にそこに母は来ていました。 耳を澄ますと『ミシミシ』とゆっくり歩く音、テーブルを手で付いて立ち上がる音『パタッ、キシッ』 それは毎日ではなく必ず日曜日の午前中だけでした。 母はなくした意識の中にも関わらず、規則正しく行動しようとする念と子供達にもっと教えてあげたいという気持ちがあったんだなぁと思います。 世の中に理由の無い現象はありません。だから私は亡霊が見ず知らずの人に危害を加えるとかはにわかに信じません。 母が亡くなると和室に母の念が来ることはなくなり、音も気配も消えました。
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