"小説"は"現実"より奇なり

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 校門に着くと、予想通り加奈が待っていた。 「一緒に帰ろ?」  加奈は笑顔でそう言った。  僕は軽く頷くと、 「じゃあ行こうか。」 と言いながら軽く促すように前を歩いた。  加奈と僕は内容のない会話をする。会話をする。会話をする。  会話、会話、会話、会話、会話、会話、会話、会話、会話、会話、会話、会話会話会話会話会話会話かいわかいわかいわかいわかいわかいわかいわカイワカイワカイワカイワカイワカイワカイワ  ノイズが走る。僕の頭から離れない違和感。変な会話をしている訳じゃない。なのにこの違和感は何だろうか。わからないまま会話を続ける。これは彼女に対しての違和感だろうか、それとも…。  違和感が拭い去れないまま、散った後の桜並木の道についた。一回目で告白されたのはこの場所だった。 「ねぇ、拓也。」  僕を呼ぶ声。僕は加奈の方を向き、何?と返事をする。  加奈は落ち着いた表情で僕に話し掛ける。 「好き、なの。ずっと、ずっと前から。」  予想していた事。いや、予想ではなく体験していた出来事。僕は不自然な程に冷静な頭で、少し焦った演技をする。 「――えっ…?急に、何を…?」  まったくもってわざとらしい。軽い自己嫌悪に陥る。騙しているような後ろめたさ。僕はそれでも演技をやめずに、驚いた表情を続けた。 「だから、拓也の事が好きなの。その、付き合って欲しいんだ…。」  加奈は真っ直ぐこちらを見ている。目を逸らす事もなく、真剣な眼差しだ。  少し無言のやりとり。無言、無言、無言、無言、無言、無言、無言、無言、無言、無言、無言無言無言無言無言無言無言  僕の脳裏にはまたノイズ。何か…違和感。予想通りの展開。しかし違和感。 「…うん、ありがとう。僕も、好き、だよ。僕も…加奈と恋人になりたい。」  少し間を開けて返事をすると、加奈はすごく可愛らしい笑顔になって僕に抱き着いてきた。  そしてさらにノイズ。頭痛を催すのようなノイズ。ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズ、ノイズノイズノイズノイズノイズノイズ。  予想通りの展開に感じる違和感。僕は何に違和感を感じているのかわからないまま、この日は過ぎて行った。この世界への不信感を残したままに。
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