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「い・や・よ。だぁって、飛び道具なんか使ったら最後、確実に“私が負ける”もの」
言い終わるのと同時に少女は駆け出し、小爆発を繰り返す炎を纏った腕で紅に殴りかかってくる。
「あ、あ、あああほーーッ! お前も一応とはいえ女なんだから……、殴れるわけねぇだろぉがあああっ!」
そんな紅の絶叫に少女は語尾に『♪』を付けるような軽やかさで、知ってる、と言いコンクリートを拳で打ち砕いていく。
(くっそーーッ! あんなでも女だと認識してしまう自分が憎いっ!)
少女が腕に纏っている炎。あれが“ヴァレリア”に触れ、その恩恵を授かった証だ。
炎という能力は割とスタンダードなもので、世界でも一〇〇人近い使い手がいる。その炎使いの中でトップクラス、能力者全体の中でも十指に入る力を持っているのが彼女だ。
(ちょっ、無理無理無理、無理だって! マジで死ぬっ!)
心臓が破裂寸前だと訴えていると思える程バクバクと言わせて、紅は少女の凶器を紙一重で避けていく。
そして、狙いすましたように迫り来る少女の拳が足元のコンクリートを砕くのと同時に、紅は跳躍し安全圏まで距離を取るのと同時に思わず零れるため息。
「はあ……、長い夜になりそうだな」
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