0人が本棚に入れています
本棚に追加
必死に走っていた。
くらい闇の中を、どこまでも走って。
だけど、出口なんて見当たらない。
ここはどこなのだろうか。
自分は何から逃げているのだろうか。
それすらも分からずに、走り続ける。
いつまでも。
「 」
名前を呼んだ。
誰かの名前を、声が枯れるほど、強く強く呼んだ。
だけど、言葉になってくれない。
空白だけ。
「 」
幾度も、叫ぶように呼ぶ。
声が出ないのか、耳が聞こえないのか。
もしかしたら、目も見えていないのかもしれない。
恐怖が、心を埋め尽くす。
ただ、貴女に会いたいだけなのに。
一目みたいだけなのに。
それすらも、叶わぬ願いなのだろうか。
力尽きた僕は、膝から崩れ落ちた。
地面は硬くて、冷たかった。
なのに頬を伝う涙はなぜかあったかくて、余計泣けた。
これはきっと罰なのだろう。
君を愛してしまった僕への、罰。
だけど、こんなのってない。
目がなくちゃ、君を見つけられない。
耳がなくちゃ、君の声を聞けない。
口がなくちゃ、君に伝えられない。
こんなの辛すぎる。
心がいたい。
僕はただ、君に会いたかっただけなのに。
最初のコメントを投稿しよう!