第一楽章 rain the song

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「…アサヒ??」 急に黙った僕を不審に思ったのか、アークは僕を覗き込んだ。 アーモンド形の大きな瞳。 高い位置で結んだ綺麗な黒髪を、太陽が照らしている。 自分でも分かるぐらい、体温が上昇した。 「どうしたの??」 恥ずかしくなって咄嗟にうつむいた僕。 声がシュンってしぼんだきがした。 「なんでもないよ??心配しないで??」 予想通りの落ち込んだ顔が笑顔に変わる。 ヒマイリみたいな笑顔。 あぁ、こんなにも好きなんだ。 そう思えば思うほど、積もっていくのは虚しさだけ。 「アサヒ、やっぱり何か変だよ??」 そういうアークの頭をくしゃくしゃと撫でる。 罪悪感に苛まれながら。 「大丈夫だから。ね??」 だけど、まだ安心できないのか表情を曇らせている。 でも、僕が笑うと君は安心したのか、またニコニコわらう。 この笑顔が偽りだとは知らずに、君は笑ってくれる。 僕の隣りで、歩幅を合わせて、僕の目を見て。 僕は君をだましてるんだよ。 なのに笑って、目をつぶって一緒にいるんだよ。 狂おしいほどに、君が好き。 好きすぎて、涙が零れた。 この先の道、隣りに君はいないのだと、知っているから。 僕はいないのだと、分かっているから。 君と一緒には、歩いていけない。 僕は、機械。 君は、人間。 一緒には、生きていけない。
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