逃亡者

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俺は、特別に面会の許可をもらった。 剛くんは、目が覚めると、まず謝ってきた。 「黙っててごめん」 「…?何が?」 「さっさと入院しろって言われてたんだ。通告書も来てたんだ…」 あぁ、あの隠した紙かな? 「だって、恐ぇじゃん?死ぬんだぜ?」 顔は平然としてたけど、声は恐怖に震えていた。 「つーか、死ぬ事より…お前と一緒にいられなくなるってのが一番恐かった…」 「…っ死ぬなんて…言わないでやぁ…。俺を…1人にしないでやぁ…」 外はあんなにも晴れてて、気持ち良さそうな風が吹いているのに。 俺達の気持ちは反比例し続けた。 「ずっと一緒や…離さへん…。離さへんで…。傍に居させてやぁ…ずっと傍におらせてやぁ…」 剛くんは切なそうに顔を歪め、呟いた。 「俺…お前が…もう、見えねぇんだ…」 見えない? 俺が見えない? 「眼が…見えないんだよ。全部が…見えない」 「見えて…へんの…?」 宙を見ているのに焦点が合っていない瞳。 その瞳には天井だけがぼんやり映っていた。 泣いた。 声を押し殺して…。
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