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暗く、月もない。
だが、その場所だけはなぜか明るいと感じられた。
ランプの光が届かないにも関わらず、岩が一望できるからだろうか。
推測は結論に至らないが、ここが他と違い神秘的とも言える雰囲気を持っていることは確かである。
影は、臆することなく岩に手が届く場所まで進んだ。
身長の倍以上はあるだろうという巨大な岩。
影は見上げるように岩を眺め、そして不意に手を伸ばした。
慈しむかのように、優しい手付きで撫でる。
だが、その瞳は慈しむ様子などない。
ランプの光を受けてギラギラと輝き、岩を通して何か別のものを見ているように感じられる。
この岩に何か隠されているのだろうか。
そのことを、この影は知っているのだろうか。
一頻り撫でた後、影は別の場所に手を伸ばす。
そこには、夕陽のように紅く、多くの人を魅了するだろう宝玉が埋もれるように存在していた。
一瞬だけ戸惑いを見せながらも、影はその宝玉に手をかける。
だが、あっさりと取れそうな見た目とは裏腹に、どんなに力を込めても宝玉が取れることはなかった。
影は諦めたように息を吐き、視線を上げると再び岩に手を添えた。
「いつか、必ず……」
瞳をギラギラさせたまま呟いた言葉は、誰に聞かれることもなくよるの闇に消えていった。
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