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とうに日も沈んだ真夜中。
ある部屋からはバタバタとした音が続いていた。
しかし、ドアを閉めきっているためか他の者は気付かない。
部屋の主であるセシーは、部屋の中を行ったり来たりしながら大きなバックに荷物を詰めていた。
服や下着など、その多くは生活用品である。
そして、食料も僅ながら詰め込んだ。
セシーは最後にもう一度だけ中身を確認し、しっかりとバックの口を閉じる。
ベッドの上に座ったまま作業を終えると、バック手を握る手が震えた。
それに気付き、より強くバックを握り締める。
気持ちを落ち着かせるために、ギュッと目を瞑り深呼吸を繰り返した。
しばらくして体の緊張が解けると、決意したように顔を上げる。
バックを肩にかけ、その重さに耐えながら机に目を向けた。
予め置いてあった書き置きがあることを確認すると、セシーは静かにドアを開けて部屋を出た。
書き置きはこうである。
『お父さんお母さん、今までありがとう。そして、ごめんなさい。
私はやっぱり、自分の夢を諦めきれません。
自分の生きたいように生きます。
本当にごめんなさい。
親愛なる弟へ
こんなお姉ちゃんでごめんね。
あんたも無理せず生きなさい。
セシリア』
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