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部屋を出て、なるべく人がいない場所を選んで通る。
広い屋敷が、こんな時ばかりは恨めしかった。
しかし、セシーは難なく外に出ることができた。
生まれて18年。
この屋敷で過ごした時間は伊達ではない。
外気に触れてホッと一息つくと、再び気合いを入れ直した。
ここで見つかれば全てが台無しになる。
足早に、だが慎重に足を進めた。
見張りの目をかわしながら、屋敷の裏手を目指す。
ここまで来ればこっちのものだ。
セシーは素早く一台の『バイク』に近付いた。
『バイク』とは、三輪駆動の車体に人の丈程の翼がついたものだ。
ウイングで使用されている、ポピュラーな移動用の乗り物である。
つい最近、セシーは『バイク』の免許を取得したのだ。
もっとも、このために取得したということは本人以外知らない。
手際よくバックを後部座席に固定し、車体に跨る。
エンジン音が響いた。
免許取り立てということもあり、不安がないわけではない。
だが、迷っている暇はなかった。
このエンジン音を聞きつけ、いつ人がやって来るかも分からない。
エンジンを噴かし、短い滑走路に入る。
スピードを上げ、翼の噴射口のスイッチをオンにした。
鳥のように上空へと舞い上がる。
眼下に住み慣れた屋敷が広がっていた。
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