切望―せつぼう―

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    陽はとうに沈み人々が深い眠りの中にいるであろう頃、1つの影が森の中を歩いていた。   手に持つ小さなランプと、空に輝く星だけが頼れる光源。 今宵は新月なのだろうか。 月の姿は見えなかった。       その足取りに迷いはない。       サクサクと草を踏みながら一定のリズムで歩き続ける。       モンスターも眠りの中なのか、その姿を見せることはないようだ。       静寂。       夜行性の動物の鳴き声もない。   あるのは草を踏む音、ランプの金具が擦れる僅かな金属音。       だが、それもある場所で不意に途切れた。       小さな空間がぽっかりと空いている。   中央に位置する巨大な岩を囲うように、周囲の木はその空間に踏み込むことはない。       影は躊躇うことなくその空間に足を踏み入れた。    
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