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「…何で子供の日なんてあるんだろうな」
「そうやね…子供が大人になる為やないの?」
「子供が大人…?」
「ほら、子供の日云うたら鯉昇りやら柏餅やら…やたらお子ちゃまっぽいやろ?」
「まぁな…そんな日だから仕方ねぇんだろうが」
「せやかて、この菖蒲酒も子供の日の飲み物や。お酒って子供は飲まれへんのに。」
そう言われれば確かにそうだ。
菖蒲酒自体は初めてと言いつつも、それらしきモノをこの日に飲む習慣が残っている事だけは、聞き覚えがあった。
市丸は先を云わずに、湯呑みを俺に手渡した。
「冬…お酒呑める?」
「べ…別に呑めねぇ訳じゃねぇけど…」
「なら呑んでみ。普通のより飲みやすいヤツやから」
崩れる事の無い笑顔で、肘杖を突いて湯呑みに視線を向ける俺を見ている。
実際、酒自体呑めない訳でも無いのだが…
どうもこの成長過程の止まった身体に酒気は辛いものらしく、微量の酒でも相応の反応が出てしまうから、基本的に酒は控えていた。
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