夢の世界へ

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(……これは……) 何故、それが気になるのかは分からない。 強いて言うならば、それが放つ雰囲気が、この世界の物とは違う様に思えた、といったところか。 勿論、ただ単純に興味深かったというのもある。 気付けば一平は、それに誘われる様に手に取り、ページをめくっていた。 「………………」 黙々と真剣に、食い入るかの様に文字を見つめ、次々とページをめくっていく一平。 しかしその手は、最後のページに達した時、完全に止まった。 様々な歴史が綴られている文章。 その中でも一際異質な文章に、一平の視線が釘付けになる。 それは、やはりこの本が元からある物ではないと、確信を得るに十分な内容だった。 その文章には、こう書かれている。 ”夢端村はその昔、年に一回、米や農作物の豊作を願い、儀式を行っていた。 やり方として、村の母親と子供を贄とし、体を清め巫女の衣装に着替えさせた後、屋敷の奥にある祭殿で奉る。 それから、更に奥にある洞穴へ行き、同じく清めた杭で贄の体を打ち付け縛り付ける、というもの。 贄が生き絶えた後に、その後一年間の豊作が約束されるらしいのだが、子孫繁栄を望めなくなる為、この儀式は禁忌として行われなくなっていた。 しかし二十年経ち、禁忌を破り再び儀式が行われた。 その儀式は失敗に終わったのだが、仮にもそれが幸いだとは呼べない。 何故なら、この儀式の失敗から数日後、夢端村は地図から姿を消したのだから。 宗形聡一郎”
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