5171人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
(……これは……)
何故、それが気になるのかは分からない。
強いて言うならば、それが放つ雰囲気が、この世界の物とは違う様に思えた、といったところか。
勿論、ただ単純に興味深かったというのもある。
気付けば一平は、それに誘われる様に手に取り、ページをめくっていた。
「………………」
黙々と真剣に、食い入るかの様に文字を見つめ、次々とページをめくっていく一平。
しかしその手は、最後のページに達した時、完全に止まった。
様々な歴史が綴られている文章。
その中でも一際異質な文章に、一平の視線が釘付けになる。
それは、やはりこの本が元からある物ではないと、確信を得るに十分な内容だった。
その文章には、こう書かれている。
”夢端村はその昔、年に一回、米や農作物の豊作を願い、儀式を行っていた。
やり方として、村の母親と子供を贄とし、体を清め巫女の衣装に着替えさせた後、屋敷の奥にある祭殿で奉る。
それから、更に奥にある洞穴へ行き、同じく清めた杭で贄の体を打ち付け縛り付ける、というもの。
贄が生き絶えた後に、その後一年間の豊作が約束されるらしいのだが、子孫繁栄を望めなくなる為、この儀式は禁忌として行われなくなっていた。
しかし二十年経ち、禁忌を破り再び儀式が行われた。
その儀式は失敗に終わったのだが、仮にもそれが幸いだとは呼べない。
何故なら、この儀式の失敗から数日後、夢端村は地図から姿を消したのだから。
宗形聡一郎”
最初のコメントを投稿しよう!