夢の世界へ

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(……儀式…、贄……?) 「……地図から消えた村……」 最後の文章を読み終え、元の位置に戻しながら不意に言葉を漏らす一平。 段々と表情が険しくなっていく。 (もしかしてここは………!?) 一つの推測を確信に変える為、一平はまだ手をつけていない本を片っ端から読み漁り始めた。 背後から、誰かが近付いて来ているとも知らずに……。 読んでは戻し、読んでは戻すという作業を繰り返す一平。 しかし、先程の物以外は言葉の意味が分からず、理解出来ない様な内容の物ばかりだった。 (くそっ…! もう少し何か情報が欲しいのに……。 俺の勘が当たってれば、ここは……。 ……まだ何かないのか…?) 求める物が見つからず、焦りを隠せない様子の一平。 それでも本を手に取る行為を止めようとはしない。 既に四分の一程は目を通しただろうか。 全てに目を通すには、まだかなりの時間が掛かりそうだ。 しかし、その時は突然訪れる。 コトッ……… 静寂に包まれた空間に、背後から微かに聞こえた物音。 それに反応し、大きく心臓を脈打たせながら、一平は振り返って弱々しく叫んだ。 「……!? だ、誰だ…!!」 しかし、何者かからの返答はない。 数秒の沈黙。 すると突然、視線の先の奥の空間から、人の形をした影がこちらに近付いてきた。 「……………」 身構える一平。 額からは汗が滴り落ち、周りの空気に圧迫される様な感覚に陥る。 自然と、心臓の鼓動も早くなっていた。
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