夢の世界へ

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「…………!?」 次第に影はなくなり、人と認識できる程の距離になる。 奥の暗闇から現れたのは、外見からして四十歳程であろう男性だった。 しかしその男性、先程までの人々とは明らかに違う。 ここに来てから今まで見てきた人々は、言わばモノクロのテレビでも見ているかのような感覚だった。 しかし、今目の前に立っている男性は、はっきりと鮮明に見える。 服装も村人が着ていた様な白装束ではなく、黒のシャツに青いジーパンと普通の格好。 そして、何よりも違うのが、生気が込められている様な強い瞳だ。 その眼差しは、俺はここに存在しているぞとでも指し示しているかの様に思える。 (……この人………) 一平を見ても、襲ってくる気配もなければ、敵意も感じられない。 それを感じ取った一平は警戒する体を若干緩め、恐る恐るその男性に話し掛けてみる事にした。 「……あの、あなたは……?」 緊張から、声が震える。 一度早まった心臓の鼓動は、簡単に治まってはくれない。 「………………」 何も語ろうとはせず、一平をじっくり見渡す男性。 堪らず、一平がもう一度問い掛ける。 「……あの………?」 その言葉に反応したのか、確認を終えたのか。 ようやく男性は、少し安心したかの様に表情を緩め、静かに口を開かせた。 「ふむ…、君はあの人達とは違うみたいだね。 ……私は宗形聡一郎(ムナカタソウイチロウ)という者だ……」
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