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「宗形聡一郎……さん?
……って、もしかしてあの本の…?」
驚きの表情を浮かべながら、先程の本を指差す一平。
「ん? あぁ、あれ読んだのかい?
そうだよ、確かにあれは私が書いた物だ。
えっと…、ところで君は……?」
「あっ、すいません!
僕、坂下一平と言います。
……あの、もしよかったらでいいんですが…、ここの事詳しく教えて頂けませんか?」
先程の本の著者本人が今、自身の目の前にいる。
(……この人に聞けば、何か分かるかもしれない……!)
「お願いします……!」
先の見えない暗闇に一筋の希望という光。
それが見えた時、一平はなりふり構わず、必死に頭を下げていた。
「………………」
それを無言で見つめながら、考える仕草を取り始める聡一郎。
何か思う事があるのだろうか。
その数秒後、ようやく口が開かれる。
しかしその言葉は、一平にとっては意外な一言だった。
「……君も連れて来られたんだね……」
「……えっ!?
君もって、一体……」
「……それは、私もここに連れて来られた一人だからだよ……」
いくら聡一郎が、今まで見てきた者達とは違って見えるとはいえ、結局は同じだろうと心のどこかで思っていた。
この世界に連れて来られたのは自分だけなんだと。
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