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相変わらず声はない。
しかし最近では少しずつ
ではあるが、表情は
取り戻しつつあった。
それはこの、【彼方-カナタ-】
という少年のおかげに
他ならない。
「若葉、今日は河原へ行かない
か?菖蒲が綺麗に咲いてんだ。
お前に見せてやりたいんだ。」
彼方は若葉の幼なじみだ。
毎日のように若葉を訪ね
始めのうちはやはり
拒絶されたものの、
近頃はそれもなくなった。
「――。」
コクリと頷き微笑む彼女が
愛しい。
彼方は若葉に十年以上
恋をしている。
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