【羽嶺若葉】中編

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相変わらず声はない。 しかし最近では少しずつ ではあるが、表情は 取り戻しつつあった。 それはこの、【彼方-カナタ-】 という少年のおかげに 他ならない。 「若葉、今日は河原へ行かない  か?菖蒲が綺麗に咲いてんだ。  お前に見せてやりたいんだ。」 彼方は若葉の幼なじみだ。 毎日のように若葉を訪ね 始めのうちはやはり 拒絶されたものの、 近頃はそれもなくなった。 「――。」 コクリと頷き微笑む彼女が 愛しい。 彼方は若葉に十年以上 恋をしている。
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