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若葉は走った。
必死に走った。
途中、履物の花緒が
切れるとそれを捨てて
裸足で走った。
向かう先は奉行所である。
先刻、親しい魚屋の娘が
知らせてくれたのだ。
『あんたの好い人‥彼方
やったか?お役人が連れて
いかはったで。』
どうやら彼方は町で若殿と
ぶつかって口論になったらしい。
滅多に表に出て来ない若殿を
彼方は知らない。
ちょっと身なりの良い
お侍だとでも思ったのだろう。
故に暑さで苛々した彼方が
ぶつかって来た相手に
無礼な口をきいた。
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