【羽嶺若葉】中編

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若葉は走った。 必死に走った。 途中、履物の花緒が 切れるとそれを捨てて 裸足で走った。 向かう先は奉行所である。 先刻、親しい魚屋の娘が 知らせてくれたのだ。 『あんたの好い人‥彼方  やったか?お役人が連れて  いかはったで。』 どうやら彼方は町で若殿と ぶつかって口論になったらしい。 滅多に表に出て来ない若殿を 彼方は知らない。 ちょっと身なりの良い お侍だとでも思ったのだろう。 故に暑さで苛々した彼方が ぶつかって来た相手に 無礼な口をきいた。
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