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そのまま急いでベンチに向かって、手に持っているシワシワのレシピを見つめる。
ハァ~
熊クンの衣替えで上がってたテンションががた落ちよ。
肩を落とす私の背中に落ち着いた低い声がかかった。
「あの……これ、忘れてますよ。」
えっ?
振り向いた私の目の前に立つのは熊クン。
思わず目が丸くなる。
「あの…?これ。
電車の中に残ってたから…」
初めて聞く熊クンの声は低く耳に心地いい。
いい声……
じゃなくて!
「えと……わざわざありがとう。……電車降りてくれたの?まだ先じゃ……」
拾ってくれたレシピは、だいぶ前に受けた時の物。
自分でアレンジしたくて、色々書き込んでいたけれど、無きゃ無いでも平気な物だったのに、わざわざ降りてまで届けてくれた熊クンに無性に申し訳ない気持ちになる。
「次の電車でも間に合うし。これ大事な物でしょう?たくさん書き込んであるし……勉強熱心ですね。」
レシピを差出しながらはにかむ熊クン。
相変わらず目元は見えないけど…
胸キュン…
「ありがとう……」
自然と笑顔がこぼれて、熊クンからレシピを受け取る。
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