第1話 始まりはプレストに

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彼女の名前は橘柚希(たちばなゆずき)さん。高めの鼻筋に切れ長で大きな瞳。スラッとした長身で、肩まである黒髪ストレートはラフな感じで切られている。彼女のそのスタイルと美しさに目を奪われる人も多いだろう。そしてもう1つ彼女が人目を引く要因がある。それが左目にある縦にバッサリ切れた傷跡だ。噂ではポン刀持ったヤクザに囲まれた時についたらしいが、まあ噂はあくまでも噂だ。 だけど腕っ節の強さはかなりのもので、俺も1度見たが男子5人を一瞬で倒していた。未だかつてケンカは常勝無敗らしい。あと俺が知っているのはかなりの無口で常に1人で行動しており、大抵外を眺めていることぐらいか。あっ、そういえば彼女は入学当初の白い肌に比べて結構日焼けしている。まあ夏が近いから仕方ないだろうけど。 「あぁ、橘さんは今日も綺麗だなぁ」 世界地図を描いていた雄馬(橘さんが来てから起きるまで0,5秒♭)が、背もたれにもたれかかり、小声でさりげなく呟いてきた。 「橘さんに負けず劣らずの美人な彼女持ちのくせに罰当たりな事を言ってるんじゃねーよ。突き落とすぞ」 思わず不意打ちでかまそうとしていた事を口に出してしまった。そう。俺と違ってイケメンのコイツは世の中の男が恨みたくなるような子と付き合っている。名前を瀬上彩華(せがみあやか)といい、くりっとした大きな眼に綺麗なパーマがかかった髪、長身で胸がほんの少―しばかり寂しく、これまたほんの少―しばかり愛情表現が過激な美少女だ。彼女は中学校の頃、男子の告白を百人切りしたという噂が流れており、それが信じられるほどであったが本人は笑って否定していた。まあとにかくそんな噂がたってしまうほどの人気者なのだ。この2人は校内でも有名なバカップルとしてその名を知らしめている。そんな彼女は俺の後ろの席についており、現在、俺はこのバカップルにサンドイッチ状態。席替えの際、気をきかせて席を譲ろうとしたが両者とも丁重にお断りされた。とてもにやついた顔で。おそらく俺に見せびらかしたいのだろう。普通なら反撃するところだろうがフェミニストで心の広い俺は笑って受け入れている。決して彼女がトラウマになりそうなほど怖い訳ではないので勘違いしないように。そんな彼女は現在せっせと先生の言っている事をメモしていた。
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