注文の少ない料理店

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「……まぁ前金払おうにも金ないし、契約成立だ。雪、リリス、こちらのお姫様が1曲御所望だから準備しな。…で、リクエストは?」 零は立ち上がり、ビリヤード台の隣にある古びたピアノに手をかける。 「……曲名はわかんないな。初めてアンタ達が私に聞かせてくれたやつ。あの時は…、ちゃんと聞けなかったからね。」 理子は空になったグラスを見つめて俯く。 「了解。そういや理子、自分の店はほっといていいのか?」 ピアノの調律を確かめながら零が呟く。 「最近は基本的に綾乃に任せてるから問題ないわよ。私も本業を優先したいしねー。」 理子の表の顔はキャバクラのオーナーで、その傍ら情報屋をしている。 もっとも、店は殆ど綾乃という後輩に任せているらしいが。 「零、準備できたです。」 「……私もできた。」 リリスがサックス、雪がマイクを持ってカウンターから出てきた。 「ンじゃぁやりますか……っと、すまん、その前に一波乱ありそうだ。」 零は苦笑しピアノの椅子から立ち上がると、理子の前まで歩き、店の扉を見つめる。 「理子、ちょっと下がってるです。」 リリスもサックスを置き零の隣に並ぶ。 理子は黙って頷くと、雪のいる方へ走っていく。
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