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「ここか、魔女が住んでいるという家は」
数人の大人が、俺の家の扉を蹴り開け、俺達を蔑むような目で見ていた
「……レイ、隠れていなさい」
母は俺を近くにあった小さな収納スペースに押し込み、その前に立つ
俺は真っ暗な空間の中、耳からしかわからない母達の状況を必死に理解しようとする
けれど、そのときの俺の脳は混乱し、全てを理解することはできなかった
──理解することができたとき、もう全ては崩れていた
そう、全て
「さあ、貴様ら。もう逃げられないぞ。大人しくついて来い」
「魔女? 何のことでしょうか」
「とぼけるな。貴様も同罪なんだぞ? 魔女であるその女と夫婦の仲になっているのだからな」
「彼女は魔女なんかじゃありません。何かの間違いで──
「黙れ」
父と男との言い合い
黙れ、と男が言ったあと、もう父の声は聞こえなかった
代わりに聞こえたのは
母の悲鳴
「いやぁぁぁぁぁ──!!!!」
耳を塞ぎたくなるような、悲鳴
でもその悲鳴のあと、母の呻く声が聞こえ、大人達が立ち去る足音が聞こえた
そこからは静寂の闇
隙間から流れ込む鉄の臭いも理解できないほど、俺の脳は今の状況に怯え、全ての行動を停止させた
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