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町の北にある小さな岡
俺はそこに花をもってずっと佇む
ある一点を見つめながら
「……」
数年前、俺はここで母を失った
父を失った場所は焼き払われ、今は新しい家が経ってしまっている
もう、家族との繋がりはここしかない
「レーイっ」
「……イーズ」
軽くクセのついたブロンドの髪を揺らしながら俺に走り寄るイーズ
彼女は、彼女の家族は、親を魔女だと疑われ殺された俺を家に招き入れてくれた。
今は、イーズは俺を弟のように可愛がってくれて、イーズの家族も俺を本当の家族のように受け入れてくれている
幸せな、時間
でも、
ここに来る度思い出す
真っ暗な棚の中
母親の断末魔
扉の隙間から流れ込む濃い鉄の臭い
焼ける肉の臭い
苦しそうに泣き叫ぶ母
ぷつりと消えた叫び声
真っ黒な影
強烈な臭いと共に残った真っ黒な灰
忘れたくても、忘れられない
脳にこびりついた記憶
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