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“ごめん、ちょっと用事できたからお昼一緒に食べれない”
……昼休み。
いつも優奈と一緒だった私。
しかし優奈はそう言ってどこかへ行ってしまった。
『一人…かぁ…』
一人で食べるなんて久々だな…
なんて考えながら、お弁当を持って教室を後にした。
こつん、教室を一歩出るとそこは教室以上に騒がしくて。
…私は無意識の内に人気のない廊下を歩いていた。
『…あ…』
ここは…。
どこをどう歩いてきたかはわからない。
けど――
気づけば、校庭に静かに佇む大きな桜の 木の前に立っていた。
ここには来たくなかったのに…
『…智也…』
ここは…
智也との思い出がたくさんつまってるから。
私は溢れそうになる涙を堪えて、
桜の木にそっと体を預けた。
『…はは…
我ながら…何て未練がましいんだろうね…』
フラれたのに。
新しい彼氏もできたのに。
『…っ、とも…や』
何で忘れられないんだろう…
そうして私は…
ここで初めて智也に会った日の事を、
瞳を閉じて思い出し始めた…―――
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