~第一話~

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『…っくしゅん』 ……暖かくなってきたとはいえ、まだ桜も散り切っていない季節。 半袖はまだまだ早かったな…。 そんな事を考えながら、薄い上着越しに腕を擦っていたら… ――こつ、と頬に暖かいモノが触れた。 『ひゃあっ!』 突然の出来事に、私は飛び上がる。 『あははっ 不意打ちー』 そんな私の後ろから、楽しそうな笑い声が聞こえてきて… 『もうっ… 直ってばー』 その犯人を口を尖らせながら見つめる。 『ごめん、ごめん。 あまりにも隙だらけだったもんで』 全く反省していないのはその表情から伺えたのだけど。 『…暖かいから許す』 先程、頬に触れた暖かいモノ――… ホットココアを両手で包み、暖を取りながら呟いた。 『はは、許してもらえてよかった♪』 そう言って笑いながら、自分の上着を私にかけてくれる直。 『えっ…いいよ、直が寒いじゃん』 上着の下から顔を出した薄いシャツ。 それを見た私は慌てて上着を戻そうとしたが… 『平気だって。 俺、暑がりなんだよ』 直は変わらぬ笑顔でそれを制した。
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