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『…っくしゅん』
……暖かくなってきたとはいえ、まだ桜も散り切っていない季節。
半袖はまだまだ早かったな…。
そんな事を考えながら、薄い上着越しに腕を擦っていたら…
――こつ、と頬に暖かいモノが触れた。
『ひゃあっ!』
突然の出来事に、私は飛び上がる。
『あははっ
不意打ちー』
そんな私の後ろから、楽しそうな笑い声が聞こえてきて…
『もうっ…
直ってばー』
その犯人を口を尖らせながら見つめる。
『ごめん、ごめん。
あまりにも隙だらけだったもんで』
全く反省していないのはその表情から伺えたのだけど。
『…暖かいから許す』
先程、頬に触れた暖かいモノ――…
ホットココアを両手で包み、暖を取りながら呟いた。
『はは、許してもらえてよかった♪』
そう言って笑いながら、自分の上着を私にかけてくれる直。
『えっ…いいよ、直が寒いじゃん』
上着の下から顔を出した薄いシャツ。
それを見た私は慌てて上着を戻そうとしたが…
『平気だって。
俺、暑がりなんだよ』
直は変わらぬ笑顔でそれを制した。
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